2005年 10/14, 10/18マティアス・ゲルネ オール・シューマン

●10/14(金) 東京オペラシティ
マティアス・ゲルネ シューマンの夕べ
~ ハイネの詩による歌曲集 ~

(ピアノ)アレクサンダー・シュマルツ

(オール・シューマン)[日本語字幕付]
詩人の恋 op.48
ハイネの詩による3つの歌
海辺の夕暮れ op.45-3(ロマンスとバラード第1集 第3曲)
ぼくの愛はかがやき渡る op.127-3(5つのリートと歌 第3曲)
ぼくの馬車はゆっくりと行く op.142-4(4つの歌 第4曲)
リーダークライス op.24

(アンコール)
シューマン / きみは花のよう op.25-24
シューマン / 2人の擲弾兵 op.49-1
ベートーヴェン / 希望に寄す op.94


●10/18(火) 所沢ミューズ アークホール
マティアス・ゲルネ バリトンリサイタル

(ピアノ)アレクサンダー・シュマルツ

(オール・シューマン)
詩人の恋 op.48
ハイネの詩による3つの歌
海辺の夕暮れ op.45-3(ロマンスとバラード第1集 第3曲)
ぼくの愛はかがやき渡る op.127-3(5つのリートと歌 第3曲)
ぼくの馬車はゆっくりと行く op.142-4(4つの歌 第4曲)
リーダークライス op.24

(アンコール)
シューマン / きみは花のよう op.25-24


 初来日の折のシューベルト「冬の旅」の名演からさほど時を経ずしてゲルネのシューマンを聴く機会を得た。ベストの席を確保して、何ヶ月も前から楽しみにしていたオペラシティの公演だったけれど、どうにもならない、差し迫った、のっぴきならない用事ができてしまって、なんと開演に間に合わなかった。ホールに着いた時には既に前半の「詩人の恋」がはじまってしまっていた。

 仕方がないので、前半はモニターを見ながらロビーで聴いていたのだけれど、モニターからの音とホールから漏れてくる音が天井の高い(ほとんど人気のない)ロビーにこだまして、とても不思議な感覚で、これはこれで趣があっておもしろかった。

 ただし、開演に間に合わなかったにもかかわらず、その雅趣をのんびりと楽しめたのも、同じプログラムの所沢公演のチケットを既に買っていたからで、そうでなかったらきっととても落ち込んでしまって、しばらく再起不能(?)の状態になっていたかもしれない。ロビーでのんびりしてはいたけれど、「詩人の恋」の並々ならぬ緊迫感、歌が作り上げる物語のクライマックスなどはロビーにいても感じられて、「今、これをホールの中に座って聴いているのだったらなあ」としきりに思わないでもなかった。

 けれど客席に入って聴くことのできた後半だけでもすばらしい内容だった。所沢で「詩人の恋」を聴くことができたけれど、これはもちろんすばらしかった! 後半のプログラムとして選ばれた作品のテキストが前半を引き継いでいるように感じられ、前半の「詩人の恋」はもちろんこの公演の最大の山場だったのだけれど、全体を通してゲルネが持つひとつのイメージ(恋する詩人、あるいは、恋する男)が連綿と歌い継がれていたように思った。

 とても充実したリサイタル。ピアノのシュマルツはボストリッジの相方の(リート・ファンの間では名高いあの)ドレイクと並ぶ名奏者。私にとってはこの人のピアノを聴くのもゲルネのリサイタルの楽しみのひとつ。

追記 2007.01.08 大幅に改稿。