2009年9月のコンサート (1)

備忘録的インデックス。


●9/5(土) 紀尾井ホール (13:30)
UNISYS 第6回 ソナタシリーズ ~ 古典から現代まで ~
川畠成道 (ヴァイオリン) & 小川典子 (ピアノ)

ヘンデル / ヴァイオリン・ソナタ 第1番 イ長調 op.1-3
プロコフィエフ / ヴァイオリン・ソナタ 第2番 ニ長調 op.94bis
(休憩)
フランク / ヴァイオリン・ソナタ イ長調

(アンコール)
フォーレ / 夢のあとに
プロコフィエフ / 歌劇「3つのオレンジへの恋」より 「マーチ」
ドビュッシー / 「ベルガマスク組曲」より 「月の光」

※川畠さんのソロのリサイタルは初めて聴かせていただいたけれど(コンチェルトは聴いたことがある)、端正で繊細、上品な演奏、温かい音色という印象。ヘンデルがとてもロマンチックに演奏されたのでちょっと意外でしたが、それはそれでおもしろく聴きました。


●9/6(日) 第一生命ホール (15:00)
東京室内歌劇場 41期第123回定期公演
《往きと復り》 《妻を帽子と間違えた男》

■プレトーク(長木誠司)

■《往きと復り》
(指揮)中川賢一
(演出)飯塚励生
(原作)マルツェルス・シッファー
(作曲)パウル・ヒンデミット
字幕付原語(ドイツ語)上演

ロベルト : 近藤政伸
ヘレーネ(ロベルトの妻) : 森川栄子
エンマおばさん : 浦田佳江
医者 : 中原和人
看護人 : 佐竹敬雄
女中 : 坂野由美子
ひげ面の賢人 : 森靖博

■《妻を帽子と間違えた男》の作品解説 (中川賢一)

■休憩

■《妻を帽子と間違えた男》 (日本初演)
(指揮)中川賢一
(演出)飯塚励生
(台本)オリバー・サックス
    クリストファー・ローレンス
    マイケル・モリス
(作曲)マイケル・ナイマン
字幕付原語(英語)上演

P教授夫人 : 吉村美樹
神経科医S博士 : 吉田伸昭
P教授 : 若林勉

※2010年のシューマン年にこの団体はなんと「ゲノフェーファ」の舞台上演日本初演を行うとのこと(演奏会形式ではこれまでにもごくたまに日本でも演奏されてきた)。このヒンデミット&ナイマンの実験的オペラ2本立ての公演はシューマンの「ゲノフェーファ」のプレ公演でもある、とのこと。

第一生命ホール周辺の写真 (小さい写真帖)


●9/9(水) 紀尾井ホール
プラメナ・マンゴーヴァ ピアノ・リサイタル

シューベルト / ピアノ・ソナタ 第4番 イ短調 D537
シューベルト=リスト
  / 嵐の朝(歌曲集「冬の旅」から)
  / 幻の太陽(歌曲集「冬の旅」から)
  / アトラス(歌曲集「白鳥の歌」から)
リスト / メフィスト・ワルツ
(休憩)
ショパン
  / 練習曲 変イ長調 op.25-1
  / 練習曲 嬰ハ短調 op.25-7
  / 練習曲 ハ短調 op.25-12
  / バラード 第1番 ト短調 op.23
ラヴェル / 道化師の朝の歌 (「鏡」から)
ヒナステラ / 3つのアルゼンチン舞曲 op.2

(アンコール)
グリーグ / 夜想曲 (抒情小品集 op.54 から)
ショスタコーヴィチ / 24の前奏曲 op.34 から
   前奏曲 第20番 ハ短調
   前奏曲 第6番 ロ短調

※シューマンのフモレスケを聴くために出かけたのだが、なんと曲目が大幅に変更されてプログラムからシューマンが消滅…。演奏者本人が8月に交通事故に巻き込まれたためというような理由。ウワサで「すばらしい」と聴いていたマンゴーヴァの演奏はいずれの作品でも実にすばらしく、だからこそ、プログラム変更でも何でも結構、とにかく、日本でリサイタルを開けるくらい元気で本当によかった、と思った。特に私が感動したのはヒナステラ。あの曲って、あんなにおもしろい曲だっけ?と曲の魅力を再発見。シューベルト=リストの「魔王」のような曲も彼女の演奏だったらきっとすばらしいのではないかと想像中…。


●9/11(金) 東京文化会館 小ホール
もっと身近に、クラシック 900円コンサート・シリーズ 19年 (vol.98)
2006~2010 メセナの神髄コンサート IV vol.4

堀米ゆず子 ヴァイオリン・ワークス IV
「音楽の旅 ─ 叙情を求めて」
~ ピアノの名手リュック・ドゥヴォスを迎えて ~

(ヴァイオリン)堀米ゆず子
(ピアノ)リュック・ドゥヴォス

モーツァルト / ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調 K.376
ブラームス / ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ長調 op.100
岡田加津子 / 母へ ~ 無伴奏ヴァイオリンのための
(休憩)
R.シュトラウス / ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 op.18

(アンコール)
コルンゴルト / ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35 から 第2楽章
クライスラー / 中国の太鼓
クライスラー / 愛の悲しみ

※前から1度出かけたいと思っていた「メセナの神髄コンサート」。「22世紀クラブ」というグループが企画、主催している京都発の活動とのこと。安い価格で良いものを提供することが目的…概略そのようなことがプログラム・リーフレットに書かれていた。この演奏会のチケットは900円(自由席)。ありがたさが身にしみる^^

会場はほとんど満席に近く大盛況。リーフレット上では休憩の後に演奏されることになっていた岡田加津子さんの作品(「委嘱世界初演」と書かれているが、世界初演は同じリーフレットを使っている9日の京都公演の方ということでしょう)が休憩の前に演奏された。リーフレットには、この作品に関連して「2009年5月アルツハイマー症を患う母へ」と添えられた岡田さんによる「母へ」という詩が掲載されている。記憶の中にある元気だった頃の母を喪失する子供の悲しさを、とても率直に、まっすぐに語る詩。とても痛切でもある。堀米さんが演奏した無伴奏の作品は、ゆっくりとその母に話しかけるような曲。痛切さ、悲しさが静かに深くこみあげてくるようだった。詩がなかったらこの作品はどう聴かれるのかなとも思ったが、この曲はこの詩とセットなのだと思う。だからこの場合は、この詩を心の中で噛みしめながら、詩と音楽の両方を静かに深く味わうのがよいのだろうな。

まろやかなモーツァルト、朗らかなR・シュトラウスもすばらしかったし、アンコールにコルンゴルトのコンチェルトを弾いてくださったのには驚いてしまったけれど、私の中での白眉はブラームス。堀米さんの滋味深い、あたたかな歌もすばらしければ、(はじめて聴かせていただいた)ピアノのドゥヴォスさんがまたすばらしかった^^


2009年 9/16(水) 東京オペラシティ コンサートホール
アンドレ・ワッツ ピアノ・リサイタル

リスト / 「巡礼の年 第3年」 から エステ荘の噴水
シューベルト / 3つの小品 D946 (遺作)
リスト / ピアノ・ソナタ ロ短調
(休憩)
リスト / 3つの演奏会用練習曲から 第3番 変ニ長調 「ため息」
シューベルト / 楽興の時 D780, op.94 から
  第5番 ヘ短調
  第2番 変イ長調
  第3番 ヘ短調
シューベルト / 幻想曲 ハ長調 D760, op.15 「さすらい人」

(アンコール)
ショパン / 夜想曲 嬰ハ短調 op.27-1
リスト / 夜想曲 「眠れぬ夜 問いと答え」

※当初発表されていたプログラムが1度変更され、さらに当日になってまた変更。最初に発表されたプログラムも1度目に変更されたプログラムもシューベルト=リスト、シューベルト、リスト、さすらい人…だったが、最終的にシューベルト=リストは消滅。シューベルト=リストの「連祷」がなくなってしまったのがちょっと残念。最終的なプログラムは、休憩を境に、どちらも、リストの小品 → シューベルトの3つの小品 → リストのソナタ/さすらい人…と対称的に並べられていておもしろい。今年の後半、10月から11月にかけては2回もしくは3回ほど、どこかの演奏会でシューマンの幻想曲を聴く予定になっているが、それらの演奏会にヒモで結びつけておきたいようなリサイタルだった。 (シューマンの幻想曲ハ長調はシューベルトの幻想曲ハ長調「さすらい人」へのオマージュ、リストに献呈。リストは返礼にこのロ短調ソナタをシューマンに献呈。一方、リストのロ短調ソナタもまたシューベルトの「さすらい人」の影響を受けている、とされている…。)

「絢爛たるヴィルトゥオーゾの演奏会」という表現が私の中ではこのリサイタルに一番しっくりする。「エステ荘の噴水」や「ため息」といった繊細な曲では、まるで水がきらめきながら流れていくような美しさ。リストのソナタではピアノが花火と化して爆発するのではないかと錯覚するほどの激しさと鮮烈さを持ちながらも、同時に繊細でもあり、劇的。表情と表現の多様さ豊かさ、色彩の華麗さに感じ入った。「さすらい人」を聴くために出かけたのだけれど、それに加えて、当初の予定にはなかった、大好きな大好きなシューベルトの「3つの小品」までも聴けたのでとても幸せ^^