2009年10月のコンサート

備忘録的インデックス。


●10/10(土) クローズド(ヴァイオリン)


●10/11(日) 東京オペラシティ コンサートホール (16:00)
マティアス・ゲルネ & ピエール=ロラン・エマール

ベルク / 4つの歌曲 op.2
シューマン / 歌曲集 「女の愛と生涯」op.42
(休憩)
シューマン / リーダークライス op.39

(アンコール)
シューマン / 歌曲集 「ミルテの花」 op.25 より
  第24曲 君は花のごとく
  第1曲 献呈

※これまで(私の知る限り)日本ではアレクサンダー・シュマルツと共演してきたゲルネが、今回の来日リサイタルではエマールと共演して、男声ではあまり聴く機会のなさそうな「女の愛と生涯」を歌うというので、興味津々で出かけた公演。テキストの詩人も作曲者も男性なので、これは男性目線の歌だから、男声によって歌われるのは妥当というような解釈らしい。私はいささか違う意見なのだが、ゲルネの試み自体はおもしろいと思う。ベルクでのエマールのピアノが驚異的。またこの2人の共演を聴ける機会があればと願っている^^ 大きなホールでのリート公演ということについてはいつも大なり小なりの不満を感じるが、それでもオペラシティ主催のリート公演は歌手もプログラムも毎回すばらしい選択、そして日本語訳を電光掲示板で表示するシステムもきちんとしているので、大きなホールでのリートは聴きたくないとは思っていても、このホールの企画だったらと足が向いてしまう^^


●10/17(土) 東京オペラシティ コンサートホール (19:00)
ピエール=ロラン・エマール ピアノ・リサイタル

ドビュッシー / ベルガマスク組曲
ベンジャミン / ピアノ・フィギュアズ
(休憩)
シュトックハウゼン / ピアノ曲 IX
ベートーヴェン / 「エロイカ」の主題による15の変奏曲とフーガ op.35

(アンコール)
リゲティ / ムジカ・リチェルカータ 第1番
クルターク / 「子供の戯れ」から 第2番
シューベルト / 3つのレントラー
シェーンベルク / 6つのピアノ小品 op.19
ブーレーズ / 「ノタシオン」 より 4曲
ショパン / 子守歌 op.57

※エマールの大阪公演が絶好調だったという話をいろいろな人から伝え聞いていたので、とても楽しみにして出かけたリサイタル。期待を裏切らないすばらしい内容。ピアノ好きによるピアノ好きのためのピアノリサイタル。終演後、知人などと「あれがよかった、これがよかった」とメールで意見交換していたのだけれど、私は中でもアンコールのシェーンベルクに大感動。エマールのショパンという最後の選曲がちょっと意外で、それもあって、とてもおもしろく聴いて帰ってきた。すばらしいリサイタルだった!


●10/18(日) サントリーホール (14:00)
東京都交響楽団 プロムナードコンサート No.335

(指揮)オレグ・カエターニ
(ピアノ)ミシェル・ダルベルト

ニコライ / 歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲
フランク / 交響変奏曲
R・シュトラウス / ブルレスケ

(ダルベルトのアンコール)
R・シュトラウス / 「4つの最後の歌」より 「眠りにつこうとして」
シューベルト=R・シュトラウス / ワルツ

(休憩)

シューマン / 交響曲 第4番 ニ短調 op.120 (1841/第1稿)

(オケのアンコール)
シューベルト / 交響曲 第3番 ニ長調 D200 から 第2楽章

※指揮のオレグ・カエターニ (1956 - )はこれまで このCD でしか知らなかった指揮者。この日の夜は小菅さんのリサイタルを聴きに行く予定にしていたので、昼間の都響はそもそも聴きに行く予定にさえしていなかった。ダルベルトを聴きに出かけようかと迷ってはいたが、結局、出かけることにしたのは後半のシューマンの4番が1841年版だったから。まったく、どうして迷ったりしたのか。聴きに出かけて本当によかった。最初のニコライから、もうとても楽しく、わくわくする演奏。ダルベルトもよかったし、シューマンも好演。けれど、なんといっても、私の中では、アンコールのシューベルトの愛らしさ楽しさが別格。聴いているだけで笑みがこぼれてきた。私の大好きな(けれど、とてもマイナーで地味な存在の)3番がこんな形で取り上げられたことは望外の喜び。またカエターニ&都響のコンビでシューベルトを聴きたいな^^。

夜の公演(小菅さんのリサイタル)まではまだ時間があったのでアークヒルズ界隈で時間をつぶそうと考えていたのだが、運悪く、この日は森ビルの休館日。あてにしていた店はすべて休み。陽気の穏やかな過ごしやすい午後だったので、「自前オープンカフェ」^^を開店することにして駅前でテイクアウト。夜の公演の開場時間まで、カラヤン広場でまったりと午後のお茶。たまたま入ったコンビニに置かれていた文庫本のタイトルに興味を覚えて購入、お茶を飲みながら広場で読みはじめたら、これがなかなかおもしろい^^。 (中江克己『お江戸の職人(エリート) 素朴な大疑問』PHP文庫) すばらしいシンフォニーの後、ゆったりのんびりと時間が流れていくことの心地よさ。


●10/18(日) サントリーホール (19:00)
小菅優 ピアノ・リサイタル

ワーグナー=リスト / 「タンホイザー」 序曲 S.442

シューマン / 交響的練習曲 op.13 (遺作変奏付き)
 Theme
 Etude I (Variation 1)
 Etude II (Variation 2)
 Etude III
 Etude IV (Variation 3)
 Etude V (Variation 4)
 Posthumous variation IV
 Etude VI (Variation 5)
 Posthumous variation III
 Etude VII (Variation 6)
 Posthumous variation II
 Posthumous variation V
 Etude VIII (Variation 7)
 Etude IX
 Etude X (Variation 8)
 Etude XI (Variation 9)
 Etude XII (Finale)

 ※遺作第1番は演奏されませんでした。

(休憩)

ブラームス / ピアノ・ソナタ 第3番 ヘ短調 op.5

(アンコール)
メンデルスゾーン / 無言歌集 op.38 より 第6曲 「デュエット」
メンデルスゾーン / 無言歌集 op.67 より 第4曲 「紡ぎ歌」
モーツァルト / ピアノ・ソナタ 第10番 ハ長調 K.330 (300h) より 第1楽章

※これはよいリサイタルでした。終演後、ホール出口でばったり会った友人が私の顔を見るなり「ブラームスがよかったね!」と言ったけれど、私はやはり交響的練習曲にとても感動。アンコールのメンデルスゾーンも好演。たっぷりドイツ系音楽を堪能した、シューマン尽くしのとても幸せな晩秋の1日^^


●10/20(火) サントリーホール
バンベルク交響楽団 (ブラームス・チクルス 東京公演 第3日目)

(指揮)ジョナサン・ノット
(ピアノ)ピエール=ロラン・エマール

(オール・ブラームス)
大学祝典序曲 op.80
交響曲 第3番 ヘ長調 op.90
(休憩)
ピアノ協奏曲 第1番 ニ短調 op.15

※バンベルク響を聴いたのは11年ぶりくらい。前回もやはりサントリーホール、シュタイン指揮のブラームス、ルプーが1番のコンチェルトを弾いたので、それを聴きに出かけたのだった。今回もやはりブラームスの1番のコンチェルトを聴きに出かけた。エマールのコンチェルトというと、これまでベートーヴェンを聴く機会は何度かあったのだが、ブラームスは私もはじめて。プログラムノートによれば、ブラームスはベートーヴェンやシューマンをたくさん弾いて経験を積んでから取り組むべき作曲家というのがエマールの考えだそうで、そのため、このコンチェルトをコンサートのレパートリーに加えたのも比較的最近、2006年になってからとのこと。流れてくる音楽からはエマール流のモダニズム、洒脱さが響いていて、非常に刺激的、おもしろかったが、予想以上に(というか、期待以上に?)「正統なブラームス」という印象。2番も聴いてみたい(←願望)。シューマンのコンチェルトが聴きたい(←欲望)。

私自身は目撃しなかったが、高松宮殿下記念世界文化賞の授賞式のために来日中だったブレンデルが、なんと、この公演を聴きに来ていたとのこと。引退したブレンデルと同じホールでこのコンチェルトを聴いたのだと思うだけで彼のファンとしては感無量^^ (後日、ニュース番組で授賞式でのブレンデルのスピーチを見たが、引退後も元気そうで本当にうれしい。


●10/23(金) 浜離宮朝日ホール (11:30)
浜離宮ランチタイムコンサートvol.69
小川典子 ピアノリサイタル

グリーグ / 組曲 「ホルベアの時代より」
グリーグ / 「抒情小曲集」 より 3曲
  小人の行進
  ノクターン」
  トロールハウゲンの結婚式
(休憩)
ベートーヴェン / ピアノ・ソナタ 第17番 ニ短調 op.31-2 「テンペスト」
ドビュッシー / 「映像」 第1集 より 「水の反映」
ドビュッシー / 「版画」 より 「雨の庭」
リスト / ラ・カンパネラ

(アンコール)
菅野由弘 / 「光の粒子」…ピアノと南部鈴のための (抜粋)

※演奏者による簡単な解説付きのコンサート。小川さんは絶好調、お話もとても楽しく、演奏も充実、すばらしいリサイタル。アンコールで演奏された菅野さんの作品は2月にミューザで世界初演された委嘱作。プログラム最後の曲の「ラ・カンパネラ」は西洋の鐘、でも日本にだってすばらしい「鈴」があるという思いから、菅野さんの作品をアンコールで取り上げた云々。ミューザの大ホールで聴いた際は南部鈴の玲瓏たる響きに驚かされたが、浜離宮は小ぶりなホールなので、あれほど深い残響もなく、これはこれで違った響き、趣でおもしろかった。楽器はホールを鳴らす、ホール自体が楽器なのだ云々という話をよく聞くが、南部鈴でそのことをよりよく実感。


●10/24(土) 講座(ピアノ)


●10/31(土) リリオ・コンサートホール (15:00)
ピアノリサイタルシリーズ 「リリオとピアニストたち」 Vol.2

(小川典子)
ドビュッシー / アラベスク 第1番
ドビュッシー / 「ベルガマスク組曲」より 「月の光」
ドビュッシー / 前奏曲集 第1巻より 「沈める寺」
ドビュッシー / 「版画」より 「雨の庭」
リスト / ピアノ・ソナタ ロ短調
リスト / ラ・カンパネラ

(アンコール)
ドビュッシー / 亜麻色の髪の乙女

(休憩)

(江口玲)
スミス(ホロヴィッツ編) / アメリカ国歌
ルート(ゴットシャルク編) / Battle Cry of Freedom, Grand Caprice de Concert

コルリッジテイラー / 「24の黒人のメロディー」より 
  Sometimes I Feel Like A Motherless Child, op.59-22
  Deep River, op.59-10
ガーシュウィン / Realto Ripples
ガーシュウィン(江口玲編) / 7つの前奏曲
ガーシュウィン(江口玲編) / ラプソディー・イン・ブルー

(アンコール)
シューマン / トロイメライ op.15-7
シューマン(リスト編) / 献呈

※それぞれ、簡単な作品解説を交えての演奏。小川さんのこのようなリサイタルは度々聴かせていただいているが、江口さんについてはソロの演奏もお話も初めて聴かせていただいた。前半に演奏されたドビュッシーの作品が書かれた時代、アメリカではどのような音楽が演奏されていたのか、時代背景と共に解説してくださったが、予想外の「衝撃的な内容」で印象深かった。当時の奴隷制にまつわるエピソード紹介として、奴隷の売買表を片手に説明。家族全員に値段がつけられて売買されていた様子や、若い女性は高値で取り引きされていたのに、70代のおじいさんには値段がついていなかった(タダだった)等々、ふだんアメリカの音楽を聴く機会もない、さらにはアメリカの歴史や奴隷制を勉強をしたことのない私にはいずれも新鮮(=生々しい?)なコンサートだった。11月16日にも浜離宮で同様のプログラムによるリサイタルが行われる予定とのこと。

(出演予定だった伊藤さんはインフルエンザのため出演とりやめ。このコンサートのお客さんのみを対象にした代替公演が2月に行われるとのこと。)

…というわけで、予告されていたシューベルト「さすらい人」、シューマン「子供の情景」は聴けなかったけれど、それでもとても楽しい、すばらしいコンサートだった。