・ 2008年 9月~12月
(この次の記事の末尾に公演の一覧表)
●弦楽器祭り
さて、昨秋は岡崎慶輔、今井信子、堀米ゆず子、竹澤恭子といった、ヴァイオリンやヴィオラの名手の演奏会を聴くことができた。この人たちはいずれも欧米を拠点としているから、東京でリサイタルを聴ける機会もそうあるわけでもないから、こうして一挙にリサイタルを聴くことができたのは幸いだった。若手の岡崎さん、中堅から大御所へと(?)ますます活躍の場を広げている堀米さんや竹澤さん、さらには大好きな今井さんと、充実のラインナップ…。岡崎さんのリサイタルははじめて聴いたが、端正で気品のある音楽に好感が持てた。いずれも、伊藤、小川、エル=バシャのピアノがすばらしく、すばらしいヴァイオリンやヴィオラと、比類ないピアノの両方の演奏を1回分のチケットで同時に聴けるのだから、なんてお得なんだと思わずにいられない。(これで「シューマン率」がもっと高ければ本当に言うことがないのだが…)
●ピアノあれこれ
ピアノではイモジェン・クーパーのオール・シューベルトのリサイタルとN響でのシューマンのピアノ協奏曲。シューマンもよかったのだが、私としてはシューベルトのリサイタルがことに忘れがたい。滋味あふれる、美しい世界だった。それからなんといっても「エル=バシャ祭り」。ベートーヴェンホール(武蔵野音大)でのリサイタルにはじまって、フィリアホールでの堀米さんとのオール・ベートーヴェン、さらに「ショパンの音楽日記」と、良い演奏会ばかりだった(しかし、この人の演奏会に良くない演奏会なんてあるのだろうか?)。田部京子さんの「シューマン・プラス」の第3回、伊藤ひろこさんとの「ブラームスとクララの対話」(朗読企画)もよかった。ラヴェル「夜のガスパール」の演奏に際して、ベルトランの詩を朗読したダルベルトのリサイタルも、ホールが大きすぎたことを除けばまったりと「夜」の雰囲気を楽しめる渋いリサイタルだった。大晦日のベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏会の企画で、真夜中の最終回(年が新しくなってから)、「24:28」に開演した演奏会で、伊藤恵さんのベートーヴェンのソナタが聴けたのはよかったし、そんな時間に演奏会場にいることがふだんないから、ちょっと変わった、おもしろい体験となった。そのことも含めて忘れがたい。「すごい時間にピアノを聴いているなあ」と我ながら半分あきれつつ…。(→ 写真)
※都合でさらにこの記事をここで分割。
まとめ (3)の(2) おわり。 (3)の(3)につづく。