林峰男 デビュー30年(2) オール・ショスタコーヴィチ(地震たいへん)

(前の投稿のつづき)

 さて、この地震騒動にはまだ続きがある。コンサートが終わってホールから出たところ、ホール目の前の施設から何か黒いものがドーッと移動してくるではないか。なんだあれはと思ってよく見ると、サッカーのユニフォームを着た大集団。よく考えてみれば、津田ホールの近所には国立競技場がある。「サッカーが終わったんだな」と周囲の人たちが言っていた。調べたら、あの日は国立競技場でFC東京とヴィッセル神戸の試合が行われていたようだ。試合を観戦した人たちが、ようやく動きはじめた電車に乗るために駅前に大集結していたのだ。その群集を見た瞬間に、「お茶でも飲んで、この人たちをやり過ごそう」ということになって、しょうがないから、少しはマシかと思える、ガマンできそうなコーヒー店に入って時間をつぶした。

 友人は林さんの演奏をずいぶん前に聴いたことがあると言った。その時、とても小さいホールで聴いていたく感動した云々。それで、最近、どこかの公演に行った時にたまたまもらったチラシで林さんのデビュー30周年記念リサイタルのことを知り、どうしても聴きたいと思ったのだそうだ。私も何年も前のことになるが、あるオーケストラの公演の前半で林さんとヴァイオリンの藤川真弓さんの2人によるブラームスのドッペルを聴いて感動したことがある。その演奏会の後半では林さんがオーケストラの中に入って、若い音楽家たちと一緒にシューベルトの最後の、あの堂々としたシンフォニーを弾いておられたことも印象深い。(D944!!!

 そんな昔話をしながら1時間ほど時間をつぶしただろうか。食べるものを食べ、飲むものも飲んでしまうと、さすがに疲れが戻ってきて、そろそろ帰りたくなってしまった。帰りは地下鉄で帰ってきたが、既に駅の周囲からは人の波も消え果て、ゴーストタウン状態だった。一度に人が集まり、殺到し、あっという間にいなくなる…よくまあ、東京の交通機関はそういう異常な「使用方法」に耐えているものだなあと改めて思った。大きな地震によって、いかに無理な使い方をしていたか、そのことが浮き彫りになって、たくさんの人が考えるきっかけが生まれた。とはいえ、人口の過密さ、一極集中が解消されない限り、この「無理な使い方」なんていうものはなくならないだろう。私は都心のコンサートホールのように、人が1度にたくさん集まる場所に出かける機会が多いので、地震に限らず、非常事態にはどう行動したらよいのか、日ごろから 脳内妄想 (じゃなかった^^)、イメージトレーニングをしておこうと思った。 (けど、やってない…)

 …読み返してみたら、これ、地震の話ばかりで音楽の話がない^^。私の心のテーマ曲、2番のトリオを含め、とてもよい演奏だったと思うのだけれど、近いうちにNHKのBShi/BS2で放送があるので、ショスタコーヴィチの室内楽に興味を持ってくださった方は、どうぞ、そちらで…。