2008年のコンサート まとめ (5) - 音楽祭/イヴェント (2) ~ 軽井沢八月祭

・ 音楽祭/イヴェント (2) ~ 軽井沢八月祭
ここに聴いた公演の一覧表

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 さて、今度は「軽井沢八月祭」の話題。2007年にはじまった、まだ新しい音楽祭。夏のリゾート地として歴史と伝統のある軽井沢に作られた大賀ホールをメイン会場として行われている。メイン会場でのコンサートのほかにも、近隣の美術館や教会などを会場として、若手演奏家の出演による、気軽に足を運べるコンサートなども開催されていたようだ。開催側の意図は、軽井沢に長期滞在している人たちに楽しんで欲しい、というか、長期滞在して楽しんでほしい…というようなものなのかもしれない。しかし、会場に行ってみれば「今朝、東京から来た。これを聴いたら帰る」というような声が少なくなかった。私の場合は、聴く予定にしていなかった公演日も急遽聴くことにしたため、結果的にどの日も日帰りという形になってしまったが、事前に予定をきちんと決めていたらきっと軽井沢に一泊あるいは数泊したのではないかとも思う。

 まだ昨年が2回目だったからということもあるのだろうけれど、首都圏の音楽ファンにこの音楽祭のことがちゃんと知られていないのではないかとも思った。というのも、どのコンサートもまんべんなく「お客が入っていない」という状況だったから。会場でばったり会った知人の数人とも、ホワイエでこのことについてひとしきり話が盛り上がったのだった。これはリーマンショック以前の話だから、景気に左右されたというよりは、単純に「東京の音楽ファンの間ではたいして話題にならなかったから世間の関心が低い」ということなのだろうと思う。コンサートの企画自体はとてもよかったと思うし、出演者も、期待の若手から人気演奏家、実力派まで、バランスよく揃えられていたし、曲目もよかったので、それだけにあの集客の悪さはちょっと意外だった。せっかくの好企画なのに、もったいない。今年は不景気だからちょっと心配だけれど、それでも、これから回を重ね、年を追うごとに賑わっていけばよいのだが。

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 大賀ホールには実ははじめて出かけたが、まずはホール周辺の美しい自然環境に惚れ惚れしてしまった。私のお気に入りホールといえば美しい公園の中にある札幌の Kitara が筆頭だが、大賀ホールも気持ちのいい公園の中にあって、これまたすばらしい立地だった。愛らしい鴨ファミリーが右往左往(?)している大きな池、そのほとりのホールのたたずまい。ホールの中でコンサートを聴かなくても、1日、この池の周囲を散策しながら、景色や鴨を眺めて過ごしても楽しいだろう。

 この大賀ホールは2005年に開館した、まだ新しいホールだ。ソニー名誉会長の大賀典雄さんが軽井沢町に寄贈されたホールで、それを記念して、ホールの前の通りには大賀さんの名前がつけられていた。ホールは五角形の美しい形。天井を見上げると、その形がまるで花弁のようで、これまた味わいがあった。樹の清涼感とぬくもりが伝わる美しい建物。ホールの概要には「客席数 1階 660席/2階 立見席 140席」とあるが、この「立見席」の意味が現地に行ってみるまで私にはいまひとつわからなかった。試しに1公演を立見席で聴いてみようと事前のネット予約でチケットを取って聴いてみた。2階にはいわゆる「座席」はなく、「止まり木」のようなものがあった。(「止まり木」というのは、中学とか高校の体育館の2階部分によくあるような感じのもの。まさに「止まり木」以外に説明のしようがない物体) 椅子ではないから座り心地は悪いし、硬いし、ゆったりした体勢で音楽を聴くことに慣れている最近の私にはちょっとつらかった。しかし、それでも、視覚的にも音響的にも捨てがたい魅力のあるポジションだ。価格も少し安くなるので、体力に自信のある人だったら挑戦してみたらよいと思う。

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 コンサートはLFJや「ショパンの音楽日記」のようなハーフスタイル、1公演60分程度。1階席1700円、2階席1200円。財布にやさしめの価格設定。私は「リサイタルシリーズ」というコンサートの中からは室内楽を2つ選んで聴いた(1つはシューマン)。また別の日に行われた「鍵盤で聴く音楽史 TWO DAYS THE PIANO II」という2日間のシリーズでは初日のシューマン&シューベルトとブラームスを選んだが、いずれもよいコンサートで大満足だった(→ 聴いた公演)。会場に行って、パンフレットを開いてはじめて、そのシリーズの2日目の最終公演でシューマンの「アンダンテと変奏曲」(全曲ではなく、変奏曲は抜粋演奏)が伊藤&若林というライグラフ門下の競演で行われることを知り、「えーい、ついでだー。釜飯食べがてらまた行っちまえー」と、平生からローテンションでめったにテンションが上がらない私にしては珍しくイケイケドンドン@いてまえ(?)のノリになって、結局、「鍵盤で聴く音楽史」の2日目も聴きに行ってしまったが(もちろん東京から)、それはそれで、ちょっとした「ピアニスト祭り」のようで楽しめた。聴きに行った3日間のシューマン率が高くてよかったな^^ (←結局、それかい…)

●軽井沢八月祭
●大賀ホール

※「小さい写真帖」で軽井沢八月祭に関連した写真を掲載しています。

まとめ (5) おわり。 (6) につづく。

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