グールド生誕75周年企画「グレン・グールド 27歳の記憶」 銀座にて再び公開

 11月も間近というのに久々の台風接近(台風20号)、雨と風が荒れる中を銀座まで出かけてきた。8年ぶりに上映される「グレン・グールド 27歳の記憶」を観るために。公開初日の21時35分の回を観て、上映の後の初日オープニング・イベント、宮澤淳一さんと平野啓一郎さんによる対談を聴いてきた。

 1959年、27歳のグールドを記録した貴重な映像である。制作40周年を記念して1999年にもこの映画は公開された。以前から「グレン・グールド オフ・ザ・レコード/オン・ザ・レコード」としてグールド・ファンには知られていた映画だが、1999年の公開に際して宮澤淳一さんにより字幕が改められ、映画の内容を完全に訳した(伝説的な)パンフレットも作成された。昨日、銀座の映画館に出かけ、劇場もオープニング・イベントもすべてが8年前をそっくりなぞっているようでとても不思議な気がした。あの超クールなポスターもパンフレットも8年前と同じままだったから、まるでタイムスリップして1999年に戻ったかのような錯覚を覚えた。あれから8年も経ったと改めて年数を数えてみて驚いているが、それだけの時間の経過を感じさせないものがグールドを取り巻く世界にはある。すばらしいデザインのポスターとパンフレット、グールドの映画、そして何よりもグールドの演奏。昨夜、映画を観た帰り道では改めてそのこと(=いつも新しいグールドの世界)を考えていた。

 この映画はこれまで何回も観たけれど、観る度に感動があるし発見がある。(発見といってもそれはたいていはささいなことなのだが) シムコー湖畔の別荘での演奏やNYのスタジオでのイタリア協奏曲の録音風景は本当に圧巻で、毎回観る度に神が降りてきたとしか思えない瞬間が訪れる。 (特に別荘で、一度席を立ってから再び弾き始めたパルティータ → YouTube ※リンク切れの場合あり)

 映画の中のグールドは永遠に27歳のままで、私はどんどん年を取っていく。音楽は永遠にこの地上に伝えられていくだろうし(ことにバッハの作品は)、デジタルの世界に残されたものも、再生の技術が継承される限りはその音楽や演奏はこの先もずっと継承されていくのだろう。演奏された時の姿のままで。けれど、それを見て聴く側は時間の中をどんどん旅して行き、しまいにはこの地上の時間を離れ、別の世界に入っていく。それでも映画の中のグールドは地上を離れず、この地上で27歳の時の姿のままで、宇宙から降り注ぐかのようなあの奇跡的なバッハを朗々と歌いながら演奏し続けている…。映画を観終わった後の銀座線の車中にてそんなイメージが頭に浮かんできた。

映画「グレン・グールド 27歳の記憶」
ネットでパンフレット、ポスターの購入も可能

●上映館の情報 (以下は2007年の情報です)
銀座テアトルシネマ 10/27(土)より
モーニング&レイトショー
(09:55~ / 21:35~)

吉祥寺バウスシアター 10/27(土)より
モーニング&レイトショー
(10:30~ / 20:45~)

MSNで予告篇(1999年版)公開中
※CMに続いて視聴可能です。劇場情報、公開日、料金は1999年の情報なのでご注意ください。

バッハ / パルティータ 第2番 (YouTube リンク切れの場合あり
バッハ / イタリア協奏曲 第3楽章 (YouTube リンク切れの場合あり)

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