このほか、印象に残っていること。2日続いたゲルバーとポリーニのリサイタルはそれぞれが巨匠ぶりを発揮していて、その対比が興味深かった。コンサート終了後、ほかのところではこれらのリサイタルについて感想を書いたのだけれど(たとえば複数の友人あてのメール)、以前のコンサートでもあるから、今ここでは1つだけ、彼らが発するエネルギー(ステージに出てきただけでその場を支配してしまうようなエネルギー、あるいはオーラ?)には心ひかれた、ということだけ書いておきたい。
五月女慧(さおとめ・けい)さんの「ベートーヴェンの夕べ」が開かれた「さいたま市文化センター」は南浦和(京浜東北)と武蔵浦和(埼京線)の中間地点にある自治体ホール。五月女さんは画家のお父様の仕事の関係で幼少時からパリで育ち、イヴォンヌ・ロリオ(メシアン夫人)に師事。パリ音楽院ではミシェル・ベロフに師事、卒業後はフィレンツェにてピエール・ナルチゾ・マージ(エトヴィン・フィッシャーの高弟)に師事したピアニスト。フランスで教育を受けられたにもかかわらず、ドイツ音楽、わけてもシューマンを深く愛している方との情報をある方からいただき、どのような演奏をするピアニストなのだろうという興味と関心から南浦和まで出かけた次第。まだ若いがすばらしいピアニスト。ご出身が埼玉という地縁もあって、コンサート会場の中には温かく優しい空気がみなぎり、とてもアットホームな演奏会だった。パリ管の千々岩さんがゲストとして共演したが、学生の頃からの音楽仲間だそうで、息の合ったデュオを聴くことができた。