2009年12月のコンサート

備忘録的インデックス。


●12/3(木) 浜離宮朝日ホール
田部京子「シューマン・プラス」第5章
「新しい道」 ― 若きブラームスとの出会い ―

シューマン / 花の曲 op.19
シューマン / 幻想小曲集 op.12
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ブラームス / ピアノ・ソナタ 第3番 ヘ短調 op.5

(アンコール)
ブラームス / 間奏曲 op.118-2

※前半のシューマンは上品でたおやかな歌(音楽)の花束。この前半もよかったけれど、後半のブラームスが一層すばらしかった。ブラームスの純粋さ気高さが、格調高く、そして清廉に描出されていた。アンコールの op.118-2 も絶品。このシリーズ、次回の公演はシューマン生誕200年の誕生日にあたる2010年6月8日。チケットは2/5発売。クライスレリアーナとショパンのノクターンなどが予定されているとのこと。


●12/5(土) サントリーホール (19:00)
デビュー20周年シリーズ III
竹澤恭子 ヴァイオリン・リサイタル

(ピアノ)イタマール・ゴラン

(オール・ブラームス)
ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ト長調 「雨の歌」 op.78
ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ長調 op.100
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ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 op.108

(アンコール)
シューマン / 3つのロマンス op.94 から 第2番 イ長調
ブラームス / ハンガリー舞曲 第1番 ト短調
フォーレ / 夢のあとに

※竹澤さんのデビュー20周年シリーズの第3弾。昨年11月の第2弾は紀尾井でフランスもの特集だったけれど(ピアノは小川さん)、今回はサントリーの大ホールでブラームスのソナタ全曲を演奏するという大コンサート。ブラームスやベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタのピアノパートをゴランが弾くと、とんでもなく凄まじいコンサートになること請け合い。いやはや、この公演のゴランもすごかった^^ ライヴならではの2人の鍔迫り合い、まるで火花が散るようで、聴いていてドキドキした^^ プログラムがオール・ブラームスのヴァイオリン・ソナタだから、アンコールはFAEソナタのスケルツォなんだろうなあと確信していたが、シューマンの op.94-2 だった!(*^^*) オール・ブラームスの後にシューマン! すばらしい!^^


●12/16(水) 東京文化会館
●12/18(金) サントリーホール
東京都交響楽団 定期演奏会 (第690回/第691回)

(指揮)ジェイムズ・デプリースト
(ヴァイオリン)イザベル・ファウスト

シューマン / ヴァイオリン協奏曲 ニ短調

(ソリストのアンコール:バッハ無伴奏)
16日: ソナタ 第3番 ハ長調 BWV1005 から 第3楽章
18日: パルティータ 第2番 ニ短調 BWV1004 から サラバンド

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ブルックナー / 交響曲 第7番 ホ長調 (ノヴァーク原典版)

※以下、サントリー公演の感想。

シューマンのファウストはほかにはなかなか望めないほどの見事な演奏。第1楽章から美しく、のびやかで艶のある、とてもあたたかい音色。第3楽章は上品で優雅。本当は輝かしい希望をうたっているこの協奏曲の本質を浮き彫りにする、よい演奏。しかし、特筆すべきなのはやはり第2楽章。天界からの旋律が、清らかに、孤独に、美しく悲しく、そして崇高に奏でられた。

このコンチェルトは「一般にはほとんど知られていない」という世評(?)だそうだけれど、シューマン・ファンにはすっかりおなじみ?!の名曲。演奏会で取り上げられる機会は少ないものの、取り上げない人がまったくいないわけでもなく、特に21世紀に入ってからは以前よりも演奏会で聴けるチャンスも増え、私はこの3年間で「なんと」(と言っていいと思うのだけれど…)4回も!の演奏会を聴く幸運に恵まれた(新日本フィル、神奈川フィル、この都響×2)。僥倖の限り。都響の定期はフォンテックが毎回録音しているようだが、考えてみたら、私が以前聴いた東京シティフィルの公演…和波さんが独奏した際にも、後半のブルックナーの「7番」(ノヴァーク版)をフォンテックが録音してCD化したのだった。…と考えて「あれ?」と思ったのけれど、今までシューマンのヴァイオリン協奏曲を演奏会で聴いたのはこの都響の2回を入れても6回しかないのに、そのうち3回は後半、ブルックナーの7番…。おもしろい(?)偶然。デプリーストさんの7番は清澄にして健やかな快演。

サントリーホールは周辺も内部もすっかりクリスマス色に。緑の少ない季節だから、なおのこと、緑のアーチがなんとも爽やかで気持ちよい。アーチの形自体は妙だし奇態だけれど。

サントリーホールの1階ホワイエもクリスマス色。


●12/31(木) ミューザ川崎シンフォニーホール (15:00)
ミューザ川崎シンフォニーホール5周年記念公演
ミューザ川崎ジルベスターコンサート2009

(指揮)秋山和慶
(ピアノ)小川典子 (チャイコフスキー)
(ヴァイオリン)大谷康子 (マスネのソロ)
(オルガン)近藤岳
(司会)梅田陽子 (フリーアナウンサー)
(管弦楽)東京交響楽団
(合唱)MUZAジルベスター合唱団
(特別編成、川崎市合唱連盟アニモ+昭和音楽大学+洗足学園音楽大学)
(合唱指揮)堀俊輔

J. シュトラウス II / ワルツ「南国のバラ」 op.388
チャイコフスキー / ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 op.23

(ソリストのアンコール)
シューマン / トロイメライ op.15-7

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近藤岳 / ジルベスター2009 (オルガン独奏、新作・世界初演)
ヴェルディ / 歌劇「アイーダ」より 凱旋行進曲「エジプトとイシスの神に栄光あれ」
マスカーニ / 歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より 間奏曲
ヴェルディ / 歌劇「ナブッコ」より 「行け、我が思いよ、金色の翼に乗って」
マスネ / 歌劇「タイス」より 瞑想曲
ヴァーグナー / 歌劇「ローエングリン」より 第3幕への前奏曲
ヴァーグナー / 歌劇「ローエングリン」より 結婚行進曲
ヴァーグナー / 歌劇「タンホイザー」より 大行進曲「歌の殿堂を讃えよう」

(アンコール)
エルガー / 威風堂々 第1番
J. シュトラウス I / ラデツキー行進曲 op.228

※大晦日のジルヴェスターコンサート。ラゾーナ周辺はたいへんな人出。終演後はラゾーナで何かおいしいものを買って帰ろうと思っていたのだが、人の数の多さを見てその気もすっかり失せる。前半のチャイコフスキーのピアノ協奏曲の後、ソリストのアンコールがなぜか突然、シューマンのトロイメライ。…という選曲にちょっとびっくりしてしまった。休憩後、オルガンの独奏による新曲初演。お正月とミューザ5周年の両方にかけて、唱歌「お正月」(滝廉太郎作曲の「もういくつ寝ると~」の歌)と「ハッピーバースデー」の旋律がモチーフとして使われていた。パイプオルガンの荘厳な響きによる「お正月」、これが意外にもバッハ風に聴こえておもしろかった。その後、オルガンの場所で、小川さんと近藤さんへのインタビューが行われ(その間、ステージでは後半の準備)、そこでピアノ協奏曲の後のアンコール曲がシューマンだった理由が小川さんから説明された。2010年はショパンの生誕200年だけれど、そのショパンを世に紹介したシューマンの生誕200年でもある、そのことを今日は覚えて帰ってください…というような、すばらしいお話。 ありがたや、ありがたや (-人-)

演奏会後半は華やかな有名曲がずらっと並べられ、ある意味で壮観。大谷さんのヴァイオリンも聴けたし、大谷さん、秋山さんのインタビューなども盛り込まれ(予想通り、というか、それ以上に?!秋山さんが鉄道の話ばかりしていたのがおもしろかった!)、盛りだくさんの内容。工夫されていたので楽しめた。ただ、全体のバランスとしては、後半はちょっと曲を詰め込みすぎ、ヴァーグナーは1曲だけでも十分だったのではないだろうか。アンコールの威風堂々は歌詞つき(合唱)のヴァージョン。客席の手拍子つきのラデツキーは「お約束」。この手のジルヴェスターコンサートにはめったに行かないけれど、たまにはいいかも、と思ったのだった。ともかくも、よい1年の、よいしめくくり。

終演後。ミューザを出たところ。川崎駅の上に年越しの満月がかかる。