たまには映画の話題(2016年後半)

映画館に観に行った新しい映画、それもそこそこマニアックだったり、小さい映画館のみで上映されているような映画でも、あっというまにCSの映画専用チャンネルで放送されることに気がつき(しかも、オプションですらない、我が家で、基本料金で観られるようなチャンネルで)、以来、映画館に足を運ぶ回数がぐんと減った。映画のチケットを買うお金を演奏会のチケット代にした方がいいではないか…という発想もあったけれど。

ツイッターを見ていると、今まさに巷で話題になっている新しい映画の話題がばんばん流れてくる。まあ、気にはなるのだけれど、「テレビで放送されたら観よう」くらいでいつもは済ましているのだが、昨年はちょっと気が変わって、「たまにはみんなが話題にしている映画を観に行ってみよう」という気持ちになり、いくつか話題の映画を観に行ってみた。

 
「シン・ゴジラ」

観る前から賛否両論あるという情報は知っていたが、観終わった後、自分は「賛」の側だなと思った。

観る人を選ぶのだろうなと思って観に行き、観ている間も、やはりそういう映画だなと思いながら観終わった。評判通り、「官僚組織の映画」という面があったし、そのあたりの細かい話は、私にはおもしろかった。

ゴジラの描き方も自分としては怖い描写だなと思った。幼児の頃に叔母と一緒に映画館で観て、ものすごく怖かったゴジラ映画の記憶まで蘇ってきた。その「怖さ」はゴジラ映画の伝統なのかなあなどとも思った。

「シン・ゴジラ」に出てくるゴジラは2011年の震災と原発事故の後の日本ではあの出来事を象徴するのだなとも。ゴジラに破壊された街や、避難する人のニュース映像が、震災当時・原発事故当時ニュース映像の記憶と重なった。

 
「君の名は。」

夏の終わりから秋にかけて、ツイッターではこの話題ばかりだったので、そんなにすごい映画なのかと思って「試し」に観に行った映画。作り方や表現、見せる工夫にとても感心した。今の時代の若い人はこういうテンポと感覚の表現を楽しむのだなと思った。音楽もふんだんに使われていて、そこも若者向けなのかなあなどとも思った。大作なので、この次にあげた映画を観ていなかったら、「2016年のアニメ映画にすごい作品があったよね」と後々までこれを話題にしたと思う。(もちろん、この映画自体はとてもすばらしい作品だ。)

 
「この世界の片隅に」

11月半ばの封切直後からツイッターでたいへんな絶賛ツイートが流れまくっていたので(しかも、「この人がそう言うなら」と思えるような人たちがみなさん感動したと言っていたので)、「何かすごいことが起きているのでは?」と直感(笑)、封切間もない11月の終わりに観てきた。

・ 戦争中の広島と呉を描いた映画
・ 映画が終わると客席はすすり泣きの声であふれる
・ 声の主演は「あまちゃん」のアキちゃん(のん=能年玲奈)
・ 今までの「戦争の時代を描いた映画」と違うらしい

原作は読んでおらず、あらすじは知りたくないので(ネタバレっていやだよね)、このくらいしか予備知識がない状態で観に行った。

本当に映画の終盤でまわりのお客さんが一斉にすすり泣き。びっくりした。自分の中の「映画上映中に聞こえてきたすすり泣きのランキング」では、大昔にBunkamura ル・シネマで観た「リトルダンサー」を抜いた。(自分の中の)歴代1位になった。

事前にツイッターでは「すごい映画」「すばらしい映画」そのような言葉を見ていたが、この映画を観終わった後では、そう言っていた人たちの気持ちがわかった。今まで観てきた戦争中の時代を描いた映画やドラマとは違っていた。こういう映画をアニメで丹念に作ることができることにも驚いた。高い表現力。そして、こういうテーマの映画を(いや、さらに言えばすばらしい原作を)高く評価して紹介し続ける人たちが大勢いることにも何か救われた気がした。

この先、何十年も、多くの人がこの映画を名作として語り続けるだろう。観終わった時に確信した。

 
番外 1 「帰ってきたヒトラー」

暑い夏を避けてぐずぐずしていたら、都心での上映館がなくなりそうになってしまい、9月に入ってから新宿で観てきた。

原作を読んだから話の筋は知っているし、BD(ブルーレイディスク)が出たら買うつもりでいたから、まあわざわざ映画館に行って観なくても…とも思っていたのだが、映画館で観てきた人たちが絶賛していたので、やはり大画面で観たいなと思い出かけた。原作同様ブラックコメディでありながら現代社会を批判している部分は非常に秀逸だと思うし、そしてやはり際どい内容。結末が怖い。

 
「ヒトラー最期の12日間」を下敷きにしてパロディにしている部分もあるというので、夏休み中にはこの映画のBDも鑑賞。(この映画は重い。重い…)

トークセッション 小説『帰ってきたヒトラー』に出かけた時の話題(2014)

 
番外 2 「薔薇の名前」

久しぶりにどうしても観たくなってBDを入手。やはりおもしろい。大好きなのだ、この映画。(原作も)

BDにはドキュメンタリーが収録されていた。これはたぶんはじめて観たのではないかと思う。こちらも興味深い内容でおもしろかった。

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