前橋、朔太郎 (1)

 さて、今度は前橋の話を書こう。出かけたのは2年前の早春。高崎を経由する。都内から高崎までは新幹線か新宿湘南ラインに乗る。この時はJRの最寄駅から新宿湘南ラインに乗った。一部には前橋まで直通の電車もあるらしいが、私が乗ったのは高崎行きだった。時間にしておよそ2時間程度。ちなみに鎌倉・逗子方面へ行くにも(余裕をみれば)2時間ほどはかかるので、さして遠いというほどではない。

 都心を抜け、郊外に行くに従って乗客も減り、東京から離れるに従い、車内ものんびりした風情に変わっていく。天気が悪く、雨が降っていた。そして寒い。電車の中で本でも読もうと思っていたが、あっという間に夢の中、うとうとしたり、時々目を覚まして車窓の外の郊外の風景(といっても天気のせいで雨に煙って真っ白に近い)を見るともなしに見ているうちに高崎に着く。これまで何度も通過した駅だが、なんと降りたのはこの時がはじめて。乗ってきたのが普通の電車だったから駅弁が買えず、駅の中でだるま弁当を買い両毛線に乗り換える。高崎から前橋までは10数分だろうか。あっという間の旅程。

 この日の夕方は前橋で群響公演(ブラームス)を聴く。雨足の強い、寒い夜だった。翌朝の天気の記憶がないが、写真を見ると午前は雲がち、午後は青空が輝いている。午後は快晴でも風が強かったことを思い出す。この日の夕方は桐生でも群響を聴くことになっていたが、その時間までは前橋で朔太郎ゆかりの文学館と記念館を見ることにした。

(つづく)

前橋の広瀬川、巨大な埴輪のレプリカ