アンドラーシュ・シフ & タカーチ四重奏団 CD「ドホナーニ:ピアノ五重奏曲 No.1 & 六重奏曲」

 また久しぶりに「お気に入りのCD」について。

アンドラーシュ・シフ & タカーチ四重奏団
「ドホナーニ:ピアノ五重奏曲 No.1 & 六重奏曲」

ANDRÁS SCHIFF & TAKÁCS QUARTET
"DOHNÁNYI"

DECCA [421 423-2]

ドホナーニ / ピアノ五重奏曲 第1番 ハ短調 op.1
ドホナーニ / 六重奏曲 ハ長調 op.37

タカーチ四重奏団
1st.vln. Gábor Takács-Nagy
2nd.vln. Károly Schranz
vla. Gábor Ormai
vlc. András Fejér

pf. アンドラーシュ・シフ András Schiff
cl. カールマン・ベルケシュ Kálmán Berkes
hr. ラドヴァン・ヴラトコヴィチ Radovan Vlatkovic

※タカーチ四重奏団はオリジナルメンバー。

 エルンスト・フォン・ドホナーニ(エルネー・ドホナーニ Erno Dohnányi) (1877-1960) はハンガリー出身。後にアメリカに移住。指揮者のドホナーニの祖父。作曲家、ピアニスト、指揮者、教育者として活躍。

ウィキペディアによれば、その門下生からは多くの著名音楽家が生まれた、とのこと。 (ピアノ:アニー・フィッシャー、ゲザ・アンダ、ミッシャ・レヴィツキ/指揮:フェレンツ・フリッチャイ、ゲオルク・ショルティなど)

 ブダペスト音楽アカデミーでドホナーニの作曲の指導にあたったハンス・ケスラーがブラームスにたいへん心酔しており、その影響もあって、ドホナーニもブラームスの影響を強く受けたとのこと。まだ学生だった1894年の終わりから1895年のはじめにかけて作曲された「作品1」の記念番号を持つ「ピアノ五重奏曲 第1番」は実際とてもブラームス風。この作品は作曲後、ブラームスに送られた。意見を求められたブラームスはドホナーニの才能を認めたばかりでなく、ブラームス自身がかつてシューマンにしてもらったように、まだ18歳という驚くべき若さのドホナーニを支援…つまり、この曲のウィーンでの初演に尽力。1895年11月にウィーンでの演奏会を聴くために、またブラームスに会うために、ドホナーニもこの時、ウィーンまで出かけたとのこと。かくして「新しき道」は引き継がれた…。

 「ピアノ五重奏曲 第1番」だけでなく、それよりもっと後の時代に作曲された「六重奏曲」 (1935) (ピアノ四重奏にホルンとクラリネットが加わった編成)を聴いていても、どうしてもブラームスのホルン三重奏曲を思い出してしまう。どちらの作品もブラームス風だけど、ところどころハンガリー風(と言っていいのかな? 後の時代の六重奏曲の方が民族色はもう少し濃いと思う)。そして叙情的。美しく豊かな旋律。濃密な響きの充足。むせかえるほど濃厚なロマンの香り。だから、たとえば、ブラームスのピアノ三重奏曲、ピアノ五重奏曲、ホルン三重奏曲のような曲が大好きという人だったら、このドホナーニのピアノ五重奏曲&六重奏曲も気に入るのではないかと思う。

 タカーチ四重奏団、一部のメンバーの交替を経て現在はアメリカを本拠地として活動を継続中。このCDはオリジナルメンバーによる録音。ベルケシュのクラリネットとヴラトコヴィチのホルンは聴きものだが、なんといってもシフのピアノの比類ない美しさは格別。長らく愛聴している録音だが、先に取り上げたアルティス四重奏団のCD同様、現時点ではどうもこのCDも入手が少し難しそうな気配。ちょっと寂しい。

 …うーむ (-_-)

タカーチ四重奏団 公式ウェブサイト (英語)
DECCA のタカーチ四重奏団のページ (英語)

タカーチ弦楽四重奏団 (ウィキペディア)
Takács Quartet (Wikipedia/en)

ここでごく一部のみ試聴可

 なお、ドホナーニの「ピアノ五重奏曲 第1番」 を弦楽オーケストラとピアノで演奏しているCDもあるのだが(併録、シューマンのピアノ五重奏曲)、家の中、どこをどう探しても見つからないので、見つかったらここで紹介するか、最近、放置している こちらのコーナー で紹介するかも。

 簡単な情報だけ掲載しておきましょう。

※ピアノと弦楽オーケストラによる演奏
シューマン / ピアノ五重奏曲 変ホ長調 op.44
ドホナーニ / ピアノ五重奏曲 第1番 ハ短調 op.1

IVORY CLASSICS [71003]
13/14 March, 2000, Corbett Auditorium, Cincinnati, Ohio

cond. Isaiah Jackson
pf. アール・ワイルド Earl Wild
American Strings Orchestra