(つづき)
古墳は住宅街に取り囲まれるような形で高台にあった。古墳が見えたところで「引き返すのがたいへんだからここでいいですか」と言われタクシーを降りる。「あそこに事務所があるから。あそこから古墳に入れますからね」と教えられた方向に向かって歩く。古墳を外からぐるっと半周する。古墳自体が高台にあって、古墳の下からの眺望も思いのほかよい。その高台にさらに驚くほどの盛り土がされていて石が葺かれている。遠くから見ると整備されたばかりの河川敷かと思うほど石の並びが美しい。その石と緑の草のコントラストが目にまぶしい。それにしてもなんという巨大さなのだろう。五色塚古墳と並ぶ小型の小壷古墳という円墳でさえ巨大なのだが、五色塚古墳の巨大さはそれを上回っている。(全長194メートル、兵庫県内最大の前方後円墳とのこと)
「方」と「円」の交わる部分、古墳がくびれている辺りとでもいったらいいのか、そこに管理事務所があり、入場者の名前を書く帳面や案内書、絵ハガキの販売コーナーなどがあった。案内板をざっと見た後、古墳内に立ち入る。ここの古墳は造営当時の姿に整備され、公園として開放されている。古墳の一番高い場所まで階段で登ることができる。
上はどうなっているのか、ぜひ見たいと思い、石段を登る。はじめに前方部分に登る。前方部分は広いテラスのようになっている。その場所からでも海側の眺望はすばらしい。そこから更に後円部分への階段が上へと延びている。後円部の高さは18メートルとのことだが、上にたどり着くまでにはちょっとした登山のようになった。なかなかに登り甲斐のある階段を登り切って、そこから今登ってきた階段の方を振り返り、その眺望の見事さに驚く。
後円部から前方部分と前方部分への階段、管理事務所を望む
(古墳の向こう側は明石海峡、明石海峡大橋、淡路島)
前方部分の先端方向から後円を望む
後円部分からの眺めは絶景。その一言に尽きる。残念ながら周囲に複数の高層のマンションが建っていて、ぐるっと360度見渡してその絶景を楽しむというわけにはいかなかったが、これは仕方ない。けれど海側の景観をさえぎるものはなく、明石海峡、明石海峡大橋、さらには淡路島まではっきりと見え、とても美しい。そして爽快だった。古代に造られた本物の古墳の真上に立って、彼方こなたを見晴るかし見下ろして、遠い海上や島までも視界の中に収めてしまうのは特別な気分だったし、得がたい体験だった。自分がまるでその古墳を造営した古代の大豪族のような壮大な気分になった。
(まだまだつづく)
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・ 神戸で「江戸」を見る
・ 神戸、桜ヶ丘銅鐸(国宝)
・ 五色塚古墳に登る (1)
・ 五色塚古墳に登る (2)
・ 五色塚古墳に登る (3)
・ 五色塚古墳に登る (4)
・ 五色塚古墳に登る (5)