(つづき)
古墳からの帰りはもちろん歩いて駅まで帰ったが(タクシーをつかまえられる場所でないだけでなく、人が歩いている姿さえも見えない…)、帰り道ではたと「どっちへ行ったらいいのだろう」と困ってしまった。古墳の上から見ていた時は「あっちの方向へ丘を下って行けばいいのだな」と帰り道の確認も容易にできた。ところが古墳から下りてしまえば、辺りはのどかな住宅街。自分がどこにいるのかもよくわからない。何度となく遭遇した分かれ道では右に行ったものか、左に行ったものか、迷いっぱなしだった。いささか古風ながらも趣のある美しい住宅街を抜けてゆく。こんなにも美しい坂道が連なるところに住めたら幸せだろうなあと本気で考える。(坂の上り下りはたいへんそうだなと思いつつも)
細い坂道があっちへ曲がり、こっちへ曲がり、まるで迷路のようだった。駅は海に向かって左だから、とにかく左側に下る道をだけを探す。人影をほとんど見かけなかったが、それでも丘を下るにつれてちらほらと人の姿が現れる。私の前を歩いている人たちはきっと駅の方向に行くのだろうからとその人たちの後をつけて行く。彼らはこの坂道の国の住民だろう、彼らにとっては馴染みの道なのだろうが、びっくりするほど細くて変な道ばかりを殊更に選んで行くように思えた。こんなところを通って本当に駅まで行けるのかなと思えるような道を早足でずんずんと歩いてゆく。見失わないように焦るこちらの足取りも思わず早くなるが、周囲の様子を眺めれば、郷愁を誘うような家々の姿に心もなごむ。思わぬ裏道散歩となって得をした気がした。そうして歩いているうちに、何の前触れもなく坂道は終わりを告げ、駅前につながる平坦な道が目の前に現れた。「駅前」が「現代」を象徴するとしたら、古墳の上にたゆたっていたのは千数百年前の時間そのものだ。そこから下へと坂を下るたびに「現代」へと近づいた。つかの間の時間旅行だった。
五色塚古墳で撮った写真を簡単にまとめた。
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