2008年のコンサート まとめ (2) - エマール、エッシェンバッハ、読響、シューベルト、シューマン

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・ 2008年 5月~8月
(記事の末尾に公演の一覧表)

 なんだかんだとのろのろやっていたら、お正月だったのに、あっという間にもうじき3月。そろそろ(私の中の)今年のコンサート・シーズンが本格的にはじまるので、この「今ごろになって去年をまとめるシリーズ」の「のんびり」モードも加速して、執筆予定として計画していた内容について、一気に書いてしまいたいと思う。

 LFJ@「シューベルト祭り」や8月の音楽祭関係は先の「予定」であらかじめ断っておいたように後でそれぞれ別個に書くとして、ここでまずあげておきたいのはエマールのリサイタルだ。とはいえ、このリサイタルについては昨年、既にこのブログに書いてしまったので( → ここ )、今は触れるだけにしておく。

※なお、エマールは今年も来日する予定で、東京でのリサイタル予定は以下の通り。曲目などの詳細は現時点では不明。(少なくとも私はまだ知らない。)

2009年 10/17(土) 19:00
東京オペラシティ コンサートホール

リサイタルのほか、ゲルネとの共演の予定もあるそうで、こちらはオペラシティのサイトにも曲目が既に掲載されている。

2009年 10/11(日) (開演時刻未定)
東京オペラシティ コンサートホール
「マティアス・ゲルネ&ピエール=ロラン・エマール」

 さて、昨年のLFJ(ラ・フォル・ジュルネ)のテーマが「シューベルトとウィーン」だったから…ではないだろうけれど(LFJではグレイトを8回聴いた、というかグレイトを聴くためにLFJに行ったわけだが…)、この時期(5月~8月)、在京&外来オーケストラの演奏会でもシューベルトを聴くことができて、私は実に幸福だった。エッシェンバッハ指揮フィラデルフィア管弦楽団のグレイト、ダン・エッティンガー指揮 東フィルのグレイト、ゲルト・アルブレヒト指揮 読響のグレイト…(いや、あなたの言いたいことはよくわかる。シューベルトにはほかの曲もあるのだということは私もよく知っている…)。

 エッシェンバッハ@フィラデルフィア管といえば、数年前にマーラーを聴いて( → その時の感想 )、まるでファウスト風「『魔女の厨』の怪しげな媚薬」みたいな世界だな、と思ったのだが、あのような無垢で美しいが不健全極まりないマーラーと、死の匂いと風呂上りの石鹸の匂いが交互に立ちあがってくるような、彼岸的なのに健やかな(けれど尋常ではない…)シューベルトのグレイトの世界が重ならない。だからエッシェンバッハのグレイトがまったく想像できなかった。けれど、聴き終わってみたら、意外にもオーソドックスで風格のある、明朗にして清々しいシューベルトだった。

 シューベルトといえば、小川典子さんがリスト編のオケ版「さすらい人」をエッティンガー指揮 東フィルの演奏会で弾かれたことも私には忘れがたい。この作品は、少なくとも東京のオーケストラの演奏会では、あまり演奏されないから、演奏会で聴けただけでも本当に幸せだなことだったが、リストに親和性のあるピアニストの演奏で聴きたいと思っていたので、これはまさに絶好の機会だった。

 アルブレヒトのオール・シューベルトを含めての話になるが、読響で聴いた3人の指揮者がいずれもすばらしかった。川瀬賢太郎さんのシューマンのピアノ協奏曲(伊藤恵)とブラームスの1番。「フェスタ サマーミューザ」で聴いた下野竜也さんのシューマンの3番。20代、30代、そして巨匠と、世代の異なるマエストロを前にして、いずれも渾身の、そして圧倒的な名演を繰り広げた読響が本当にすばらしかった。今年もまた読響を聴く機会を持てたらよいなと期待している。

 シューマンでは加藤知子さんのヴァイオリン・ソナタがすばらしかった。もちろん、ピアノが非常に大事な曲だから、伊藤恵さんとの共演によるコンサートはいずれも遠出して聴きに出かけた甲斐のあるものだったわけだが(あ、しまった、これは「まとめ (5)」の軽井沢の話題で書くはずのことだった…)。田部京子さんの「シューマン・プラス」もカルミナ四重奏団とのピアノ五重奏曲がすばらしかったが、それ以上に交響的練習曲の切々たる、そして真摯な演奏には心打たれるものがった。リサイタルの冒頭で、事前には予告されていなかった ノベレッテ op.21-1 が演奏されたのはうれしいサプライズだった。

まとめ (2) おわり。 (3) につづく。

→ このシリーズのもくじ

★ 2008年 5月~8月 一覧表 ★

 【5月】

●5/10(土) NHKホール
NHK交響楽団 第1619回定期公演(Aプロ1日目)

(指揮)尾高忠明 (ピアノ)レオン・フライシャー

●5/14(水) 東京オペラシティ
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第219回定期演奏会
~ フリーメイソンと大音楽家たち III
「モーツァルトの作品に顕われたメイソンの証し」

(指揮)矢崎彦太郎 (ピアノ)伊藤恵

●5/17(土) 湘南台文化センター市民シアター (16:00)
湘南台トワイライトコンサートシリーズ 2008
ロベルト・シューマンの肖像 ロマン派の驍將・ピアノの詩人
~ 第1回 シューマンの室内楽 ~

(弦楽)イソ弦楽四重奏団
(ヴァイオリン)加藤知子 (ピアノ) 伊藤恵

●5/25(日) 横浜/菜香新館5F (中華街上海路)
「茶館銀芽11周年記念行事」

賈鵬芳 (二胡) 姜小青 (古箏) ミニコンサート

●5/27(火) サントリーホール
フィラデルフィア管弦楽団 東京公演

(指揮)クリストフ・エッシェンバッハ
(ヴァイオリン)五嶋みどり

●5/30(金) 紀尾井ホール
2008年日伯交流年記念
アントニオ・メネセス チェロ・リサイタル

(チェロ)アントニオ・メネセス
(ピアノ)伊藤恵

【6月】

●6/12(木) 浜離宮朝日ホール
《シューマン・プラス》 ~ ロマン派の音物語
第2章 シューマンの魂にせまる鍵盤 × 弦
田部京子 with カルミナ四重奏団

●6/13(金) サントリーホール
東京フィルハーモニー交響楽団
第754回 サントリー定期演奏会

(指揮)ダン・エッティンガー
(ピアノ)小川典子
(テノール)成田勝美
(合唱)新国立劇場合唱団

●6/14(土) サントリーホール
第20回 クウォーターズクラブチャリティコンサート

(指揮)船橋洋介
(ピアノ)伊藤恵

●6/15(日) オーチャードホール (15:00)
第755回 オーチャード定期演奏会

(指揮)ダン・エッティンガー
(ピアノ)小川典子

●6/22(日) 大田区民ホール・アプリコ (15:00)
アプリコ&読売日響シリーズ
シューマンとブラームス
(若きマエストロで聴くオーケストラ・シリーズ Vol.1)

(指揮)川瀬賢太郎
(ピアノ)伊藤恵
(管弦楽)読売日本交響楽団

【7月】

●7/15(火) 東京オペラシティ コンサートホール
ピエール=ロラン・エマール ピアノ・リサイタル

●7/19(土) 東京芸術劇場(マチネ)
読売日本交響楽団 第102回東京芸術劇場マチネーシリーズ
(オール・シューベルト)

(指揮)ゲルト・アルブレヒト

●7/25(金) 沼津市民文化センター 小ホール
伊藤恵 ピアノ・リサイタル

●7/30(水) ミューザ川崎シンフォニーホール
フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2008 (15:00開演)
読売日本交響楽団

(指揮)下野竜也

【8月】

●8/10(日) すみだトリフォニーホール (13:30)
アジアユースオーケストラ 東京公演

(指揮)ジェイムス・ジャッド
(ヴァイオリン)エルマー・オリヴェイラ

●8/11(月) 東京芸術劇場
アジアユースオーケストラ 東京公演

(指揮)リチャード・パンチャス
(チェロ)アリサ・ウィアスタイン(アリッサ・ワイラースタイン)